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別府市 内成 棚田

大分見聞録 この記事は約 4 分で読めます。

筆者がまだ若かりし頃、ツーリングの帰り道、別府湾SAで知り合った方に「ここからの絶景は素晴しいよ」と教えてもらい、県道別府挾間線の「鳥越峠」をめざし東別府方面から一路、駆け登ることにしました。

その「鳥越峠」の道中、「内成」という標識が目にはいり、その語感になにかしら心惹かれて急遽右折することに…。鬱蒼とした森の坂道を下り大神峯神社の鳥居の脇を駆け抜けほどなくすると、視界がぱっと明るくなり今までみたことがない絶景が目の前に広がりました。

「ここは本当に日本なのか?」と思わずヘルメットの中で呟きました。急峻な斜面に階段状に数えきれないほどの水田がひしめき、五月晴れの下、キラキラと輝く水面に整然と植えられた苗達の息づかいが聞こえてくるかのような、なんとも幻想的な風景に高揚したのを覚えています。

幼い頃、筆者は田園地帯で育ったので、田畑のすがたを知らないわけではなかったのですが、段々畑は見慣れてはいたけれども、階段状のしかもこれほど大規模な水田は見た事がありませんでした。  後に、人伝にこれが「棚田」という独特な水田のカタチであるということを知ったのでした。

農林水産省のホームページには、山の斜面や谷間の傾斜地(傾斜二〇分の一以上とします)に階段状に作られた水田のことを「棚田」と言うと定義されています。さらに、棚田は「日本のピラミッド」といわれるほどの伝統・文化、美しい景観、教育、国土保全といった多面的機能を有しており、農業生産活動を主体としつつ、地域住民等の共同活動によって守られている国民共通の財産であるとも記されています。

「内成の棚田」は四二ヘクタールに及ぶという広大な面積のなかに約一〇〇〇枚の棚田があり、九州屈指の規模と景観を誇っていますが、これにより一九九九年に農林水産省が選出する「日本棚田百選」に選ばれました。  さて、水田と言えば当然、豊かな「水源」が必須ですが、この高い標高でどうやって水を引いているのか?

その鍵を握るのが、内成の村で一番高い場所にある「石城寺」です。この寺院は国東半島の六郷満山を開いたと言われる仁聞菩薩が開基したとされ、ある老夫婦が飲む水が足らずに困っていると聞き、菩薩が杖で石を突き、水を湧出させたそうです。この「石城寺」の麓の湧水が水源で、常に一定の水量を保ち大雨が降っても濁る事がない不思議な湧水とのこと。また大きな石(当地では水分石と呼ばれている)が水源に落下し左右均等に水の量を分け、水争いを避けたと言い伝えられています。

では、「内成の棚田」はいつの時代から開発がはじまったのでしょうか?これには諸説あるようで、関ヶ原の戦いがあった一六○○年頃からとも、それ以前の中世中期に遡るとも言われています。いずれにしても気の遠くなるような長い歳月をかけ、多くの人々が巧みに湧水を利用し、石積の技術・造成に労力を費やし築き上げた重要な農業遺産である事に違いありません。

この絶景を誇る「内成の棚田」もご多分に漏れず、後継者不足による存続の危機が危ぶまれています。棚田は高低差が大きく、水田一枚あたりの面積も小さく、そのため機械化にも限界があり、さらに石垣の整備・管理にも手間がかかり、耕作の効率化を図りにくいという難点があります。しかし、この歴史ある棚田を守るために、地域の方々が力を合わせて耕作放棄地の発生の防止や、農作業機械の共同購入などの活性化活動、さらには都市生活者との交流を促進する方策など、新たなアイデアや工夫を重ね、様々な存続活動に取り組んでおられます。

「内成の棚田」は単なる生産の場ではないでしょう。日本の原風景とも言えるその素晴しい景観はもとより、歴史、文化などの観点からも多様な価値を持つ、ふるさとの大切な宝物だと言えると思います。

注釈 *1急峻な斜面:内成の棚田は平均勾配10分の1。水平距離で10m進むと1m高くなる傾斜地。 写真キャプション ■水無しの滝/田植の時期になると 水が流れなくなる不思議な滝。 ■内成の棚田の絶景ポイントは、棚田が一望できる一番人気の「月見石」。階段状の棚田の景観が見渡せる「太郎丸」。棚田を下から見上げる「下畑」が主なポイント。その他のながめのいい場所には休憩用のベンチが置かれています。

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