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別府市 伝統工芸 別府竹細工

大分見聞録 この記事は約 4 分で読めます。

例年、秋も深まると竹田市、臼杵市や杵築市などをはじめとして県下各地で華やかな「竹灯籠」のともしびによるイベントが開催されます。この所謂「竹あかりの祭典」は大分県だけではなく、温暖な気候を好む「竹」の生育に都合のいい地球温暖化も手伝ってか、近年全国的な広がりを見せています。

「竹」は古くから日本に生息し、食料(タケノコ)や包装物、建築用品、農機具など様々な用途で、生活や産業に関わってきましたが、近代化が進み、代替物資が普及するうちに需要が減少し、さらに竹林を管理する後継者数も不足がちという状況のなか、元来の繁殖力の旺盛さが、樹木などの他の植生を破壊する竹害」を引き起こしています。

そこで竹林伐採の間伐材を有効利用する前述の「竹あかりの祭典」が考案され、地域おこしと環境保全、「竹」と人との好循環・共生のひとつの道筋が作られたのです。これはある意味「動的」な潮流を形成しているとも言えるでしょう。

ここで忘れてはならない、もうひとつの「静的」な道筋。それが一五〇〇年以上の歴史を誇る「別府竹細工」なのです。この歴史は、景行天皇(紀元前一三年〜西暦一三〇年)が九州熊そ征伐の帰りに別府に立ち寄った際、食事担当の従者が良質な竹の多いことを発見してメゴ(茶碗かご)を作ったことが始まりと言い伝えられています。

室町時代になると、行商用のかごが本格的に生産されるようになり、さらに江戸時代には泉都別府の名が全国に広がると共に、湯治客の日用品として飯かごや、米あげざるといった台所用品が量産され、土産物としても持ち帰られるようになり、竹細工の市場が整備・拡大されて行きました。

明治には近代化の波がこの世界にも押し寄せ、技術者養成を目的に別府浜脇両町学校組合立工業徒弟学校が三五年に創立され、全国から竹職人が集まり、技を研鑽し、その蓄積をもって別府竹細工を地場産業として押し上げて行きました。昭和一三年には大分県立工業試験場別府工芸指導所が開所、翌年には大分県傷痍軍人職業再教育所(現大分県立竹工芸訓練センター)が設立され日本唯一の竹工芸の専門訓練校として現在もなお、優秀な技術者を輩出しています。昭和二五年には竹細工の技術発展のために別府市工芸研究所(現別府市竹細工伝統産業会館)が設立され、試作研究や竹細工従事者の技術指導などを行いました。

昭和三〇年代に入ると日用品の素材に安価なプラスチックが進出、海外製品も流入し、竹細工製品も陰りを見せ始めました。そこでハンドクラフトの高度な技術と持ち味を活かした高級ブランドとして舵を切り、生活用品的イメージとの決別を図りました。

昭和四二年には別府市の生野祥雲斎が人間国宝に指定され、「別府竹細工」は美術工芸として高い造形性を認められ、ハイクラスなステージに立ったのです。昭和五四年には通産省(現経済産業省)から「伝統的工芸品」の指定を受け、ここに至って名実共に「別府竹細工」のブランドステイタスを確立したと言っても過言ではないでしょう。

「別府竹細工」の今日までの道のりが、たやすいものでなかった事は想像に難くありません。筆者も二〇数年ほど前、別府市出身で現在、臼杵市で竹細工の工房を主宰されている竹職人の方を取材しましたが、少年時代の生活は苦しいばかりで、当時は家業を継ぐなど、とても考えられなかったとおっしゃっていました。

その淡々とした口調とは裏腹に、竹と共に生き、竹に生かされる日々を重ねながら、手仕事でなければ、伝えることができない何かがあることを営々と探求してこられたことを察し得ました。

竹細工に従事されている方の「竹」に新しい「いのち」を吹き込む優しさと、情熱が見えた一瞬でした。

 

注釈 ※1熊そ(くまそ):日本の記紀神話に登場する、現在の九州南部にあった襲国(ソノクニ)に  本拠地を構え、ヤマト王権に抵抗したとされる人々。 ※2傷痍軍人:(しょういぐんじん):戦傷を負った軍人。 写真キャプション ■雲龍/田辺信幸 作 別府市竹細工伝統産業会館 所蔵 中心部分の模様が「龍が天に昇っていく姿」、周囲が「雲」を表現。マダケを使い、中央はヒゴを重ねて束ねたブロ ーチ編みを応用し、周りは輪弧編みで作られています。 ■伝統的工芸品の指定を受けている別府竹細工の技法として、「四つ目編み」「六つ目編み」「八つ目編み」「網代(あじろ)編み」「ござ目編み」「松葉編み」「菊底(きくぞこ)編み」「輪弧(りんこ)編み」が指定され、別府竹細工の基本的な編組技術として受け継がれています。 これらの編組の組合せによって、200種類以上の編み方が可能とされています。

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