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豊後高田市 富貴寺(ふきじ)

暮らし この記事は約 4 分で読めます。

大分県豊後高田市 田染蕗(たしぶふき)地区に、阿弥陀堂建築として宇治平等院鳳凰堂、平泉中尊寺金色堂と並び称され、また、九州最古の木造建築物であるといわれる国宝大堂を擁する「富貴寺」があります。

「富貴寺」は、養老二年(七一八年)に仁聞菩薩(にんもんぼさつ)によって開かれた六郷満山という神仏習合(日本固有の神の信仰と外来の仏教信仰とを融合•調和するために唱えられた教説)の山岳宗教の一翼を担い、天台宗六郷満山寺院として今日もなお法灯(仏法がこの世の闇(やみ)を照らすことを灯火にたとえていうこと)を伝える由緒ある古寺です。  

(国の重要文化財に指定されている木造阿弥陀如来座像。
また、大堂内に描かれた壁画も同指定をうけています)

仁聞菩薩は、宇佐神宮に祭られた八幡神の化身とされ、国東の山岳で七十年もの修行をしたという謎に包まれた伝説的人物で、その仁聞菩薩が「富貴寺」大堂の本尊の阿弥陀如来像を一本の榧の巨木から造ったと伝えられています。

「富貴寺」がある田染蕗一帯は宇佐八幡宮の荘園である田染荘 糸永名(たしぶのしょう いとながみょう)に属していました。一二二三年、「蕗浦阿弥陀寺(富貴寺)」に宇佐大宮司の所領の田畑が寄進されて後、「富貴寺」は宇佐大宮司家代々の氏寺・祈願所となり、また宇佐大宮司による糸永名の開発も進められ、領有争いもありながら宇佐神宮は繁栄を続けました。

その繁栄のさなか、京都では釈迦の入滅後二千年を過ぎると仏法が衰えて世の中が乱れると信じる末法思想が流行し、人々は浄土信仰に救いを求めました。京都では一〇五三年に藤原頼通(ふじわらのよりみち)によって建立された、宇治平等院鳳凰堂などが著名で、宇佐神宮でも僧を招いて法会などが盛んに行われたそうです。

この浄土信仰の延長線上に、一一四四年に補任(ぶにん/官職に任命すること)され、実権を握った宇佐大宮司、宇佐公通(うさきみみち)が浄土信仰の実践の場として「富貴寺大堂」を建立したのではないかと言われています。その証左として、浄土教的色彩の濃い主題を描いた堂内の壁画や、本尊・阿弥陀如来、を安置する須弥檀(しゅみだん:内陣)を中心に外陣が取り囲む様式など、当時京都で流行した技術や嗜好が反映されていることなどが挙げられています。

鎌倉時代後期から南北朝時代の動乱期、武家勢力が増大するにつれ、「富貴寺」と糸永名は領主である宇佐宮から離れ、地頭・曽禰崎(そねざき)氏から田原(たわら)、調(つきの)氏へと武家勢力の交代劇にさらされました。この時代の痕跡は境内の石造物の銘文にも見られます。

調氏は大堂の大修理を行うなど、保護に務めましたが、後の大友氏の圧政で焼き討ちなどが起こり、「富貴寺」の寺勢も他の六郷満山の各寺院と同じく衰退しました。

江戸時代に入り、肥前島原藩主松平忠房の寄進により「富貴寺」は肥前島原領として寺勢を取り戻し、六郷満山の一修験寺として存続していきました。

時代に翻弄されながらも、凛として美しい佇まいで私たちを迎えてくれる「富貴寺」。特に晩秋の紅葉に包まれた景観には、思わず息をのむほどに魅了されてしまいますが、魅力は他にもあります。境内に存在するたくさんの石造文化財。その一つ一つに、この紙面では書ききれないほどの多くの歴史の痕跡が刻み込まれているのです。お目当ての大堂めがけ、つい通り過ぎてしまいがちですが、参道脇の小さな「石殿」や「笠塔婆」たちの囁きに耳を傾けるのも「富貴寺」の楽しみ方のひとつと思います。

◆出典・参考/豊後高田市ホームページ、豊後高田市教育委員会 国指定史跡 富貴寺境内保存管理計画書、その他。

◎所在地/大分県豊後高田市蕗2395
◎交通/「JR宇佐駅前」より高田観光周遊バスにて「富貴寺」まで40分
◎問い合わせ/tel.0978-26-3189

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